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アカスジキンカメムシ新成虫2017

■アカスジキンカメムシ新成虫と抜け殻

そろそろアカスジキンカメムシの羽化が始まるのではないかと思い、先日発生ポイントに見に行ってみた。葉の上に終齢(5齢)幼虫がいくつかでていた。

これが葉の裏側にとまっていれば羽化が近いサインと予想し、探してみるが見つからず。今年は花の時期も昆虫の発生も遅れているようなので、アカスジキンカメムシの羽化も、もう少し先かもしれない……などと考えていると、葉の上に今シーズン初の新成虫を発見。

トレードマークの「赤筋」模様は薄く、まだ本来の色が出きっていないようだ。おそらくこの近くで羽化したはず。カメムシの羽化といえば気になるのが《抜け殻落とし》だ。脱皮や羽化したばかりのカメムシが自分の抜け殻を落とす行動をこれまで何度か目撃しており、これを僕は勝手に《抜け殻落とし》と呼んでいる。抜け殻を残しておくと天敵に嗅ぎ付けられやすくなるため、発生の痕跡を生活圏から排除するという意味があるのではないかと想像しているのだが、詳しくは後述。

興味深い《抜け殻落とし》だが、この行動は必ず行なわれるわけでもないらしい。というのも、葉の裏に残されている抜け殻が見つかることがしばしばあるからだ。脱皮直後・羽化直後にわざわざ労力を要す《抜け殻落とし》をするのには、それなりの理由(意味)があるはずだが、《抜け殻落とし》をするもの・しないものがいるのはどうしてなのか……このあたりが気になっている。

まだ羽化してさほど時間が経っていない新成虫が出ていれば、おそらくその近くで羽化したはずで、そのさいの抜け殻が残されているのか、落とされているのか──確かめてみたくなる。

ということで、この新成虫の近くを探すと、葉の裏に抜け殻が見つかった。

たぶんこの新成虫の抜け殻だろう。この個体は《抜け殻落とし》をしなかったことになる。葉の裏に残されていた抜け殻↓。

幼虫時代に白かった部分は半透明の膜で、硬質の黒っぽい部分とは質感が違っている。白い糸のように見えるのは気管の外壁(?)だろう。

今シーズン初の新成虫を見つけた少し先で2匹目の新成虫を見つけた↓。

赤筋の色がまだ薄い新成虫。羽化後現場にとどまっている状態っぽい。ならば抜け殻は──と周囲を探してみるが葉の裏には見つからない。葉の裏に残っていれば見つけ出すのは容易いが、落とされたものを探すのは難しい……葉や枝に止まっていた昆虫がカメラを向けると落下することはよくある。落ちた昆虫を見つけるのは難しいが……あれと同じ。新成虫がとまった下の地表を探してみたが抜け殻は見つからなかった。

そうこうしているうちに見つけた時は尻を向けていた新成虫が向きを変えた↓。

証拠品(抜け殻)は見つからなかったが、葉の裏にあったはずの抜け殻が残されていないということは……この新成虫↑は《抜け殻落とし》をした可能性が高そうだ。

そこからさらに離れた場所で3匹目の新成虫をみつけた。

体色は薄め──この近くで羽化したはずである。とまっていた周辺の葉の裏を探すが抜け殻は見つからず。《抜け殻落とし》をしたのだろうと、新成虫の下の地面も探してみる。さいわいなことに下はアスファルトだったので(見つけやすい場所だったので)すぐに《落とされた抜け殻》を見つけることができた。

終齢幼虫と、3匹目の抜け殻の画像を並べると幼虫の白い部分が半透明の膜であることがわかる。

この抜け殻を落ち葉の上に乗せて撮影したもの↓。

よく見ると腹のふちに気門の丸い孔が開いているのが判る。カメムシ特有の針のような口器は、口針とその鞘にあたる口吻が確認できる↓。

こんな細かいところまできれいに脱皮しているのに、あらためて感心してしまう。

この個体は《抜け殻落とし》をしたと認定。

この日は3匹のアカスジキンカメムシ新成虫を見ることができたが、翌日も同様に葉の上に出ている新成虫を5匹確認できたので、引き続いて今シーズンの4匹目↓。

やはり赤い部分が薄め。おそらくこの葉か近くの葉の裏で羽化し、葉の表に移動して待機(?)をしているところ。葉の裏を探すが抜け殻は残されておらず、おそらく落とされたのではないかと思われる枝の下を探してみるが、みつけることはできなかった。

5匹目の新成虫は、赤が比較的鮮やかに出ていた。羽化から少し時間が経っているのかもしれない。

この場所で羽化したのではなさそうな気もするが、一応周囲を探す──が、抜け殻は発見できなかった。

6匹目と7匹目はほぼ同時に見つかった↓。

葉の裏に抜け殻は確認できず、2匹の下(地表)で1つだけ落とされていた抜け殻を見つけることができた。

8匹目は周囲の葉の裏に抜け殻はなく、すぐ下に落とされていた。

今回見つけた新成虫8匹のうち、葉の裏に抜け殻を残していたのは1匹だけ。確認することができた落下抜け殻は3個。不明は4つ。葉の裏に残されていればみつかりそうなものだから、不明の4個も落とされた可能性が高そうな気がしている。

こうしたことを考えると、アカスジキンカメムシは基本的には《抜け殻落とし》をするのではないか。《抜け殻落とし》をしなくても風等の影響や時間の経過で劣化した抜け殻が自然に落ちることもあるだろうが、羽化したての成虫がその場にとどまっているようなタイミングで新品の抜け殻が落ちるとは考えにくい。風等で落ちたのであれば、軽い抜け殻は飛ばされ、直下の地表で見つかることもないだろう。

それでは、《抜け殻落とし》をしないで抜け殻が残される状況はどうして生まれるのだろう? 羽化(脱皮)直後、《抜け殻落とし》をする前に何かに驚いたりして逃げたり、天敵に襲われて抜け殻が残るということもあるだろう。しかし、それだけで片付けてしまって良いものか……実際にどのくらいの割合で《抜け殻落とし》が行なわれるのか・行なわれないのか──そのあたりは気になるところだ。

カメムシの《抜け殻落とし》とは?

羽化したてのエサキモンキツノカメムシが、自分の抜け殻に攻撃を仕掛け落とすようすを初めて目にしたのは5年程前だった。その時はなぜこんな行動をするのかわからず驚いた。この謎めいた行動は、その後アカスジキンカメムシの羽化や脱皮でも確認。わざわざ労力のかかる仕事をするのだから、そこには何か理由があるはずだ。天敵対策的な意味があるのではないか──そう考えるようになった。寄生蜂や寄生蠅がニオイを手がかりに寄主(宿主)を探していたとすると、脱皮や羽化直後の抜け殻を自分たちの生活圏に残しておくことは天敵を呼ぶことにもなりかねない。その危険を排除するために生活圏の外に抜け殻を落とすのではないか──という解釈。

これがセミやチョウなどなら、成虫が飛び立ってその場から離れてしまえば抜け殻がその場に残ったところで自分たちに不利益は無い。しかしカメムシは幼虫・成虫ともに脱皮や羽化をしたあとも同じ場所に留まり生活する──抜け殻を残しておけば寄生蜂や寄生蠅を自分たちの生活圏に呼び寄せてしまう危険がある……。やはり生活圏内で脱皮するチョウの幼虫の場合は自分の抜け殻を食うことで天敵に見つかる危険を消去できるが、カメムシは口の構造上、抜け殻を食べて隠滅することもできない……。そこで《抜け殻落とし》で天敵の手がかりになるものは速やかに生活圏から排除する──そんな意味があるのではないか。

また、抜け殻が葉に残れば、やがでアリに見つかり大挙して押し寄せるアリの行列に自分たちの生活圏が脅かされることにもなりかねない──こうした危険(不利益)を回避するために《抜け殻落とし》は機能しているのではないだろうか。

この考え方に立つと、チョウや蛾の終齢幼虫が食草から離れ意外に離れたところで蛹になるのも、(カメムシが抜け殻を生活圏の外へ排除するように)蛹を自分たちの生活圏から遠ざけるため──という解釈もできそうな気がする。

チョウや蛾の場合は、幼虫時代に寄生され蛹から寄生蜂・寄生蠅がでてきたりすることが少なくない。不幸にも寄生されてしまった幼虫が仲間の近くで蛹化し、そこから寄生蜂や寄生蠅が発生すれば仲間達が次のターゲットにされる危険が高まる。これは種としての生存率にも関わる問題だ。そこで寄生蜂や寄生蠅の発生源となりうる蛹を仲間達から遠ざけるために、わざわざ危険を冒して徘徊するのではないか?

蛹を遠ざけるという行動は(目立つ移動で)個の危険を高めるとも考えられるが種としての危険リスクを減らし生存率を高めることにつながっているからこそ採用されてきたと考えると合点がいかないでもない。

脱皮直後あるいは羽化直後のカメムシがわざわざ《抜け殻落とし》をするのも、種としての危険リスクを排除する行動の一環ではないかと思えてくる。

過去の画像から、これ↑は脱皮直後のアカスジキンカメムシの幼虫が《抜け殻落とし》をするようす。

アカスジキンカメムシの羽化↑の観察では《抜け殻落とし》の瞬間は確認することができなかったが(雨で観察を一時中断した2時間半の間に抜け殻が落とされた)、落とされた抜け殻は確認することができた。

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●アカスジキンカメムシ新成虫と抜け殻

https://blogs.yahoo.co.jp/ho4ta214/38131129.html